世界のワインのコラム

美しきブルゴーニュ、クレール・ノーダンの世界

ドメーヌ アンリ・ノーダン-フェラン

アンリ・ノーダン・フェランはクレール・ノーダンがオート・コートを中心にエシェゾー、アロース・コルトン、ラドワ、ニュイ・サン・ジョルジュ、コート・ド・ボーヌ・ヴィラージュ等に合わせて22haの畑を持つ造り手で、ドメーヌはオート・コート・ド・ニュイのマニ・レ・ヴィレ(Magny-les-Villiers)に在ります。

1850年から続くこのドメーヌ、クレールが父親から引き継いだのは1994年。クレールは自然な味わいのワインを造れないかと、当時各地の生産者を訪ねてブドウ栽培、ワイン造りを学びました。
そして辿り着いたのはヴォーヌ・ロマネのジャン・イヴ・ビゾでした。彼らはその後結婚しましたが、それぞれのドメーヌの当主としてワイン造りを続けて来ました。お互いのドメーヌに口出ししない2人でしたが、クレールはビゾの助言の元、ワイン造りはナチュラルなスタイルに変化して行きました。

透き通った美しい味わいのワイン造り

クレールは出来る限り自然な味わいのワイン造り、醸造過程でのSO2の使用を出来る限り減少させてゆくために、先ず健全なブドウを育てることから始めました。ドメーヌのワインには父の時代から続けてきた味わいの「クラッシックレンジ」とクレールが作りだした「ナチュールレンジ」の2つに分かれています。
自ら考える自然なワインを造るに相応しいブドウを生み出せるようになった畑からナチュールレンジに移行していき、現在も、クラッシックからナチュールレンジへの移行が次々と進んでいます。

クラシックレンジでSO2の添加量は総SO2量で40mg/L前後、ナチュールレンジでは20~30mg/Lほどで、醸造過程では添加は無く、ボトリング時か必要な場合はマロラクティック発酵の終了時のみとなっています。
クレールは「良いワインを造る上で重要なことは、健全なブドウを造り、健全なブドウをそのままワインにしてゆくこと、造り手は醸造において手を加え過ぎないこと」を基本にしていますが、「手を加え過ぎないことは放置することではない」とはっきりと言っています。

彼女は醸造過程においてほとんどSO2の添加を行ないませんが、唯一、マロラクティック発酵の終了後に必要最低限のSO2を添加しています。これはマロラクティック発酵後に野生乳酸菌やバクテリアの繁殖によってワインが変質してしまうのを防ぐためです。

透明感のある自然なワイン

全くSO2を使わないのが自然派ワインなどと解釈されがちですが、自然派ワインと名乗るワインでよく出会う煮豆のような香り、あるいはある種の悪臭、そんな汚染された味わいを自分のワインの中に発生させたくない、そんな思いで必要最低量のSO2を添加します。健全なブドウから造り出された美しい味わいを守るため、母親が子供の様子を見守るような、優しい愛情が込められています。

クレールのワインには透き通るような透明感があり、口当たりは軽く控えめな味わいながら口内で広がり、そして驚くような余韻となって飲む者を魅了する味わいのワインに仕上がっています。
それは全キュヴェに共通する味わいです。赤ワインの場合はブルゴーニュ パス・トウー・グランのオメガからトップレンジのエシェゾーまで一貫したドメーヌのスタイルを持っています。彼女のワインはグラス1杯で満足するワインではなく、食事と共にじっくり味わいたいそんなワインです。

野の花のイメージをワインに

新しい「ナチュールレンジ」のワインには、それぞれAOCの名称以外に名前が与えられています。中でもオート・コートとコート・ド・ニュイ・ヴィラージュのワインには畑に咲く野の花の名前が付けられ、エチケットにもイラストが描かれています。いかにも女性醸造家らしさが感じられる彼女の作品に付けられた花をご紹介します。
また、AOCの表記はバックラベルに記載され、メインラベルにはワイン名(花の名前)と収穫年、そしてクレール・ノーダンの表記のみとなりました。

◆ブルゴーニュ オート・コート・ド・ボーヌ ルージュ 赤
オルキス・マスクラ(Orchis Macula)/ ユーラシア・ラン(蘭)
◇ブルゴーニュ オート・コート・ド・ボーヌ ブラン 白
ベリース・ペレニッス(Bellis Perennis)/ 雛菊(英語ではデイジー)
◆ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ ルージュ 赤
ミヨゾティ・アルヴェンシス(Myosotis Arvensis)/ ノハラムラサキ(わすれな草の一種)
◆コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ ルージュ 赤
ヴィオラ・オドラータ(Viola Odorata)/ ニオイスミレ(香りの良いスミレ)

アンリ・ノーダン-フェランのワインはこちらから

クレール・ノーダンのワイン

その佇まいから清楚、理知的、行動的、そしてチャーミングな印象のあるクレールさんですが、初めての来日は2014年。女性が選ぶワインアワード「第一回サクラワインアワード」の受賞式に出席していただくためでした。アンリ・ノーダン-フェラン ブルゴーニュ オート・コート・ド・ボーヌ ブラン ベリース 2011年が最高賞の「ダイヤモンドトロフィー」(出展の1%で全20本)を受賞。そして特別賞として「Best Wine produced by a woman winemaker(女性のワインメーカーが醸造したワインの中から特に優れたワイン)」も同時に受賞し、記念すべき第一回サクラアワードのNo1として、その名前は日本のワイン愛好家に広く知られることになりました。

ヴォーヌ・ロマネの秀逸な生産者ドメーヌ ビゾのジャン・イヴ・ビゾの妻であり、3児の母であり、自らもオート・コート・ド・ニュイのドメーヌ アンリ・ノーダン・フェランの当主としてワイン造りを行うクレール・ノーダンさん。どれも一切手抜き無し、人生300%生きているようなクレールのワインは、夫ジャン・イヴのコンサルタントもあり、見事にナチュラルな味わいを持つに至りました。

彼女の造る、オート・コート・ド・ニュイやオート・コート・ド・ボーヌを味わうたびに、AOCとは決してワインの質を規定している物ではなく、産地の目安に過ぎないと思える事が多々あります。確かに小売価格で5,000円を超えるオート・コートのワインは余程の著名ドメーヌものでなければ、購入に迷う事でしょう。そんな価格のオート・コートに誰しも疑問を持つことでしょうが、どこにもない彼女の味わい、吸い込まれそうになる美しく魅惑的な香りに出会う度に、全てに納得させられます。
ぜひ試していただきたいワインです。

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