世界のワインのコラム

マルク・ソワイヤール(ドメーヌ・ド・ラ・クラ) オフィシャル初来日

ニューヨークタイムズ紙にブルゴーニュの注目若手生産者として報じられて早10年、今や世界のワインラバーが新たなヴィンテージのリリースを待ち望む造り手に成長したマルク・ソワイヤールさんが、オフィシャルで初来日されました。

実は彼は2016年にプライヴェートで来日され、未だ取引は始まっていなかったのですが、お会いして直接お話を聞く機会がありました。そのおかげか、初ヴィンテージから日本の輸入代理店となれたことは幸運な事でした。

今回の来日セミナー(業界関係者対象)は京都・大阪・東京で開催。その実力と人間性、そして素晴らしいワインの味わいは、来場された方々を魅了し、鮮やかな印象を残して行かれました。

ブルゴーニュ地方でも、その北端にあるコトー・ド・ディジョン。マスタードでも有名なディジョン市の西に位置する丘陵地に、マルクのワイナリーがあります。このワイナリーはドメーヌ・ド・ラ・クラと呼ばれ、ディジョン市が持つ160haもの広大な土地の中に最高の立地条件を持つ、僅か8haの美しい斜面にブドウ畑は広がります。

ディジョン市は「食の都ディジョン」の再興の一環として、このワイナリーから素晴らしいワインを送り出すために、2013年に栽培醸造責任者を公募。20数名の応募者の中から栄冠を勝ち取ったのが、マルク・ソワイヤールでした。

2014年からブドウ栽培とワイン造りを行ったマルクの実力はたちまち大評判となり、時を置かずに海の向こうのアメリカでニューヨークタイムズ紙に取り上げられる程になったのは前述の通りです。

どうしてそんなに素晴らしいワインが出来るのでしょうか?

彼は言います。
「ワインは自然が造るものでは無く、一番大切なものは人間であり生産者です。生産者は自然の力を借りて良いワインを造ります。最終的には人間の存在が重要なのです。」

続けて、「私が耕作する畑はブルゴーニュでは並級のブルゴーニュAOC格付けの畑ですが、それを生かすも殺すも生産者の力次第です。一般的なブルゴーニュワインのヒエラルキーは勿論存在しますが、それを鵜呑みにしてはならないのです。いいワインを造るためには、先ず収量を落とす必要があります。有名なグラン・クリュの畑であっても、農薬散布によって収量を多くし、酵母添加や醸造補助剤を使えば使う程、土地の個性は失われます。私たちの様に一般的な格付けの畑でも、どのようなアプローチで仕事を行うかによって、その格付けをひっくり返せるワインを造ることはできるのです。」

農薬や除草剤を使わないブドウ栽培、収穫は完全に手摘み収穫で、収穫時に畑でブドウの房にある腐敗果や未熟果を全て取り除き、ワイナリーにはピカピカのブドウが房ごと持ち込まれます。

ワインの醸造中にSO2(亜硫酸塩)を使用しないのは、発酵を全てブドウや蔵に付いた天然酵母を使うため、SO2添加によってそれらの活動を妨害させないためなのです。醸造中のきめ細やかな作業の連続、常に変化する状況に対応して行く膨大な手作業の連続から、美しいワインは生み出されるのです。

東京でのセミナーが終わってほっとした表情のマルク、その夜はお疲れ様会で大いに盛り上がりました。

今回の来日イベントに同行して強く感じたことは、マルクの誠実な人柄でした。セミナーを行うときの真っすぐな集中力、しっかり資料に目を通して間違いの無いように進める真摯な態度、偽りのないワインを造り出す人の姿がはっきり出ていました。見上げるような大きな体、その顔から零れ落ちる優しい笑顔の温かさは人を引き付けて放しません。

最後に、今やマルク・ソワイヤールに「ドメーヌ ビゾのジャン-イヴ・ビゾの弟子」と言う定冠詞は、もはや必要ないものとなりました。


追伸:マルク・ソワイヤールさんは大のマデイラワイン好きと発覚。「フランスでは良いマデイラが入手でいない」と、ポルトガルから取り寄せているとの事。マデイラエントラーダでは大興奮でした。

(館農)



マルク・ソワイヤールの詳細は下記のコラムにも掲載しています。
◆ワインコラム『マルク・ソワイヤール ブルゴーニュの次世代を代表する造り手』